大きな仕事が峠を越えた。
先のことは予断を許さないが、ちょっとした解放感とともに、
いつもと違う道を通って家に帰る。
◆◇◆
家の近くに中古CD店があったとは知らなかった。何となく入ってみる。
ジャズ・フュージョン系の陳列棚に、無意識のうちに足が向かう。
そのタイトルを見た瞬間、頭の片隅で眠っていた記憶が、一気に目覚めた。
中西俊博 「太陽がいっぱい―'Till Next Summer―」
◇◆◇
大学生になって、札幌でひとり暮らしを始めたのは今から20年前。
ニューエイジミュージックと称される音楽が、ちょっとした流行だった。
溝口肇、中村由利子、村松健、ジョージ・ウィンストン・・・・・・
好きでよく聴いた「歌詞のない音楽」のなかには、確かに中西俊博もあった。
中西俊博といえば「太陽がいっぱい」と刷り込まれるくらい、当時のFM番組では
よく流れていたような気がする。
もっともあの頃は、中西俊博の明るいヴァイオリンよりも、
渋ささえ感じさせる溝口肇のチェロのほうが
だんだんと好みになっていったような気がする。
◆◇◆
本やCDとの出会いは一期一会。
いずれそのうち・・・が、永久の別れになる。
迷うことなく買い求め、家路を急ぐ。
――アルバムタイトル曲「太陽がいっぱい」の、まさに明るい旋律は、
20年前のあの頃を思い出すのに、充分すぎるほどだった。