高橋たか子の小説「空の果てまで」に、
主人公が夢の中で手相見と会話する場面がある。
誰でも頭の上に一匹、動物を飼ってましてな、
それが何かわからないのが、当人の至らぬところ……
と淡々と語る手相見。
小説とはいえ、悟りを開いた者の一言一句が、印象に残っている。
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駅前のビジネスホテルにチェックインし、
晩飯を食べに外へ出る。
少し先の路上に手相見がいた。
ふと目が合った次の瞬間、手相見は手招きしながら、
「どうです。やっていきませんか?」
と声を掛けてきた。
不意を突かれた私。慌てて足早に通り過ぎる。
角灯籠の灯とともに超然として客を待つ。
そんな手相見のイメージが、あっけなく崩れた地方都市の夜。