中心人物に向いていた視点がすっと切り替わって、
全景というか、空間的な拡がりを感じさせながら終わる――
そんな小説やエッセイが好きである。
自分の中で代表的なものを2つ、抜粋。
そのとき久緒は、自分が歩きに歩いてきたという、なにか肉体的ともいえるような感じをもった。
地の果てまできた。そう思って、眼をあげた。地の上には空が拡がっていた。空の果てには空があり、さらにその果てにはまだ空があるらしかった。
(高橋たか子 「空の果てまで」 新潮社)
お世辞だろうとは思ったが、はじめに誌したように、外国人との会話はいわば知性休業だと諦めて来た私には、たいへん心にしみるお世辞であった。
外へ出ると、雪雲はますます厚くなっているようであった。
(外山滋比古 「F氏とのひと時」 中公文庫 「省略の文学」所収)